カットだけではなく車と家も売る美容室【美容室経営相談室】

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あなたの美容室では、店販以外に何かビジネスを行っていますか?それとも、施術でいっぱいいっぱいで他のことをしている暇なんてないでしょうか。ある美容室で、レジ横スペースに雑貨やアクセサリーを売るコーナーが設けられていて、それを見たお客様が買っていくというシーンを見かけたことがあります。そして、近年ではなんと、車と家を売る美容室があるのだそうです。一体どういうビジネスモデルなのでしょうか。

美容室ape(アーペ)さん

茨城県水戸市を中心に展開されています。実は、最初はカフェと雑貨が混ざった店舗を目標とされて、2001年に設立されました。その後2009年6月、雑貨店・カフェとの併設で美容室『ape beauty WORLD水戸東原店』がオープンしました。ですので、美容室が後から何かを始めたのではなく、異業種が美容室を始めたパターンです。しかし、固定観念にとらわれない新しいスタイルの美容室は目を見張るものがあります。

オープン後なのに1日10人

2001年設立後の、カフェと雑貨が混ざった店舗は次第に人気店になります。地元では、雑貨とカフェの店としてアーペは「水戸・ひたちなかエリアの人気店」までに育ちました。そして、その顧客1万人の情報を生かし集客をしはじめました。そのデータを活用できるのは、とても有利だと感じたそうです。週末にもなれば、交通整備が必要な程にぎわったものの、9割が雑貨とカフェを利用する人ばかりでした。一方で美容室には全然人が入りませんでした。どうしても、お客様には「カフェや雑貨のお店」という印象が抜けていなかったようです。

コラボではなく自社経営

しかし、その後「アーペがやってる美容室なら」と信頼を獲得して、オープンしてから4ヵ月後には、利用者は1千人までにのぼりました。なぜそこまでにもっていけたかというと、代表の鈴木氏の見解によると、

・アーペは、すべてグループ企業の自社事業として行なっている。

・各事業のスタッフは同じグループの社員であり仲間だから、アーペが目指すものを全員の共通認識としている。

・髪を綺麗にする、カフェでお茶をする、雑貨を買うお客様は、「1人のお客様」であることが理解できている。

・この意識の統一が、カフェや雑貨のお客様を美容室に誘導する際の、大きな信頼感や安心感に繋がっている。

と述べています。ここでわかるのは、違う事業をしようとも、同じお客様が違うサービスを受けているだけだと柔らかい考え方を持てるかどうかが、カフェと雑貨と美容室が混ざってもうまくやっていける秘訣だったということでしょう。

戸建住宅・車販売のスタート

アーペの理念は、トータルビューティーのみならず、「ライフスタイルの豊かさ」をうたっています。そして、2012年11月には『ape beauty WORLD 那珂店』をオープンさせました。そこでなんと、「家」の販売をはじめます。こちらも自社で事業を行い、理念を見失うことなく一貫性をもって展開していきました。カフェで提供しているような、ぬくもりやナチュラルさなど住んでみたいと思わせる工夫をこらしているようです。

終いには、2013年10月にトヨタとの半年契約で、アーペオリジナル『ヴィッツ』を定価158万円で50台限定売り出しました。さすがにこちらはコラボ商品ながらも、アーペのカラーを存分に生かした車のデザインとなりました。車種は30代〜40代の女性をターゲットにしていたこともあり、美容室に来るお客様の中で「アーペの車なら」と実際に売れたそうです。1時間以上、お客様と話すチャンスがある美容師だからこそ、お客様の情報を引き出すことができ、お客様のライフスタイルや家族構成に合わせた提案ができたのでしょう。また、見知らぬ営業マンから買うよりもいつも通っている美容師から買いたいというお客様が多かったようです。

美容師経験のある鈴木代表

もちろん、美容師から家や車が売れれば、その美容師のインセンティブは高額なものとなります。しかし、なぜこのようなことを鈴木代表は考えたのでしょうか。実は、独立する前は鈴木代表は美容学校を卒業後に美容師になり、6年都内で勤務を続けました。そして、独立当初は「アシスタントの給料を平均より上たい」と考えていたそうです。しかし、売上が優先でそれを叶えることができなかったという苦い経験から、その後も様々な事業に挑戦し続け、美容室で家や車を売る事業をはじめたそうです。その他にも、「スタッフの努力が報われる仕組みを作っていきたい」「成長したスタッフが将来を思い描き続けられるステージを用意しておきたい」と美容師の社会的地位の向上や、働きやすさに努めているそうです。

また独立をサポートするために、1年目は美容室を事業化し、軌道に乗ったらフランチャイズ化してスタッフに譲るそうです。独立する時のリスクや負担をもつことで、難なく独立できるように環境を整えているそうです。更には、アーペは求人にも困りません。理念に共感した人が集まるか、アーペで働いている美容師の紹介で入社するそうです。全体の8割が自らアーペで働きたいと手をあげた人々なんだとか。お客様だけでなく、美容師をも引きつける魅力があるようです。

髪を切る場所だけではもったいない

上記のアーペさん以外にも、美容室でヘアケアに関係のない商売を行なっている美容室が増えてきました。保険をおすすめしたり、ボディエステをおすすめしたり、様々な商材を扱っているようです。ここでポイントなのは、「例え何も話さない1時間だったとしても、月に1回、3ヶ月に1回でも会い続けると自然と信頼関係ができる」という部分をうまく活用しているという点です。信頼関係が生まれるようになれば、お客様は美容師の声に耳を傾けるようになり、更にはお財布の紐がゆるくなってくるのです。ですので、高いインセンティブがつくからといって、またはノルマを課して無理くり営業をかけるような環境に決してしないように努めなければなりません。「最近、子どもの送り迎えが増えたから車が欲しいのよね〜」などと会話の中で、出て来たときに「ご紹介できますが」とすかさず出すくらいの準備をしておくようなイメージでしょうか。いきなりは難しいと思いますので、まずは店販商品から自然に売れるような流れをつくると良いでしょう。