30年生き残ってきた美容室の影の努力【美容室経営相談室】

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2015年10月16日に、30周年を迎える美容室があります。前田勝代表が九州で、13店舗経営している「カッツカンパニー」という美容室です。多店舗経営で、創業が長い美容室と言えば、ついつい有名店にばかり目がいってしまうところですが、粛々と成功を収めている美容室1つです。

以前のこの記事(『20年以上続く美容室は0.3%』)の中で、30年以上美容室を経営しているMINXさんをご紹介しました。そして、30年以上美容室が生き残れる確率は、0.02パーセントというお話をしました。そんな荒波に負けずに30年以上も美容室を経営してきた前田代表の秘訣は一体、何でしょうか。

1、前田代表の成功した理由

なぜそんなにも長い間、美容室を経営しているのに業界やメディアに露出があまりされていないのでしょうか。発祥の地、佐賀県では何回か取り上げられたようですが、美容業界で目立った様子はありませんでした。

つい先日、異業種が美容室を後から経営して上手くいっているお話をしました。(『カットだけではなく車と家も売る美容室』)実は、前田代表はこの逆で、美容室を何店舗か展開した後に、全くの異業種の事業をスタートさせて経営を続けてきたのです。

1−1 強運か人望か

前田代表は、佐賀県で生まれ佐賀県で育ちました。高校2年の時に行きつけの美容室で「美容師にならないか」と言われて美容師になることを決めました。そして、その通り高校卒業後に佐賀県市内の美容学校に通い美容師になります。身内は公務員やサラリーマンばかりで、知り合いにも美容師がいなかったため猛反対されました。

それでも、佐賀県の美容室に就職し1年勤めあげた後に、上京します。そして、東京の美容室で3年修行した後に「ロンドンに行きたい」とロンドンへ再び修行をしに行くことにしました。そして、ロンドンに行ってから1年半が経った時に、佐賀県に里帰りをすることになりました。

地元へ帰り、お世話になっている方々へご挨拶をして回りに行っている最中のことでした。その中にダリヤ(美容室で使うヘアケア商材の有名企業)の社長がいました。すると、そこで「私が1500万出資するから、自分でやってみないか」と言われました。当時23歳だった前田代表は、決心してロンドンへは戻らず、美容室を設立することにしました。

1−2 たくさんの失敗を経験

そんな縁があって、佐賀市呉服元町の2階に美容室を設立しました。オープン当初は人が来てくれていたものの、次第に客足が遠のいてしまいます。前田代表は当時の様子を、「お客様第一だということを忘れていた。ロンドンで流行している髪型で満足したり、若いこともあって、競争心とか敵対心ばかりで思いやりがなかった。すごく反省している」と語っています。

そんな苦い経験を経て、お客様を大切にする心や、他業種の人たちとの交流も大切にするように。地道な努力で、軌道に乗るのに数年かかりました。そして、その後に2店舗目を出しますが、エステを開始したことでまた失敗をしてしまいます。様々な失敗を繰り返し、現在では13店舗もの美容室を経営するまでになりました。

1−3 数々の事業

昭和60年、23歳の時に美容室を設立させてから18年経った頃に、「美容師を自分の手で育ててみたい」と前田代表は思うようになります。周囲には国家資格を取る学校は大変だし、上手くいかないから辞めた方がいいと反対されます。しかし、前田代表はなんとか、エッジ国際美容専門学校を開校させます。今では、数々の美容師を輩出する専門学校へと成長しました。

また前田代表は、教育と衣食住に注目していて、この専門学校以外にも、佐大前不動産という地元密着の不動産や、サクラフーズという食品の事業も手がけています。実は、この様々な事業を行ってきたところに成功の秘訣があるのです。このような経営の方法を「経営の多角化」といいます。

2、経営の多角化

目立つ美容室だけが成功しているかと言えば、そうではありません。よくメディアに取り上げられる美容室は「ブランディング」と行って、自分たちの美容室を上手に、広告や紙面を使ってお客様にアピールをしているので、成功も目立つのです。カッツカンパニーのように、経営の方法がうまくいっていても、そこを評価されるチャンスがあまりないだけなのです。

ブランディングは、どうしても資金力や才能や運に頼ってしまうところがあります。一方で、様々な事業に挑戦し、それを上手く関連させて、地道な経営をすることはどの美容室オーナー様にも参考になる点ではないでしょうか。

2−1 経営を多角化するメリット

経営を多角化するメリットとしては2つあります。まず1つ目は、「企業活動が効率的になる」という点です。例えば、富士フィルムが良い例です。富士フィルムはカメラで有名な会社ですが、使い捨てカメラが世の中から消えてから、経営が厳しくなりはじめました。しかし、そのフィルムが色あせない成分を、化粧品に応用することによって、商品が売れて、今では回復を図っています。お客様も名もない会社から化粧品を買うより、富士フィルムのような名のある会社から買った方が何となく安心です。このメリットは今回の話には当てはまりません。

2つ目に、「リスクを分散できる」という点です。例えば、美容室の経営が厳しくなった時に、不動産の売れ行きがよければ、美容室の経営がよくなるまで、潰さずに何とか持ちこたえることができます。まさにこれが、美容室カッツカンパニーの勝因なのです。

2−2 経営を多角化するデメリット

それでも、気をつけなくてはいけないこともあります。それは資本や労働力を1つに集中できないために効率的に経営できないデメリットも存在します。手を広げた分、簡単に事業をやめる訳にはいきません。やはりそこにお金を使わない、その部門の人々は解雇なんてことはできないからです。

【まとめ】時代の変化に耐えられる力を

日本の古くからの年功序列や終身雇用の文化が、近い将来なくなると、多くの経済アナリストが予想しています。それだけ、経営が一筋縄にならない時代がきています。もちろん、この様々な事業をしてリスクを分散させることが、あなたの美容室に必ずしも良いとは限りません。自身の美容室がどのような状況にあるのか、今後どうしていきたいのか、それによって使ってくる経営方法や戦略という名の勝つための作戦を考えなければなりません。あなたは時代の変化に耐えられる準備ができていますか?

参考URL:『美容室展開し30年 MAEDAが記念式典「カッツカンパニー」』